数理音響学研究室

複数マイクロホンによる風雑音低減の検討

キーワード:野外録音技術,雑音低減,風雑音

概要

複数マイクロホンを用いて風雑音の低減を行う技術の開発を進めている。野外の録音では風雑音が大きな問題となることが知られており、その低減が求められている。本研究では、複数のマイクロホンを使用した高精度な風雑音の低減法について検討を行っている。複数のマイクロホンを使用したスペクトルサブトラクション(SS)やビームフォーミング(BF)は、信号の相関値によって低減性能が変化する。扇風機による風雑音をステレオで収録し、コヒーレンス関数を用いてパラメータ毎に相関分析を行った結果、31Hz周辺で0.8程度の相関値が得られ低周波帯における風雑音低減の有効性が確認された。

現在は数値シミュレーションによる風雑音の分析を検討している。また企業との共同研究として、得られた特徴を元に高精度な風雑音低減のアルゴリズムの開発を進めている。

実験環境


図1. 収録環境
図は本研究における風雑音の収録環境である。一般室内で扇風機を動作させて2チャンネルのマイクロホンで風雑音を収録した。マイクロホンと扇風機との距離は 158cm ある。マイクロホンの向きは 真横 と 正面 の2通り、マイクロホンの間隔は 1cm ・ 2cm ・ 3cm ・ 5cm ・ 10cm の5通り、風速は 2.2m/s ・ 1.7m/s ・ 1.1m/s の3通りで収録を行った。

グラフ


図2. 相関の種類別比較
図2はコヒーレンス関数による各種相関値である。複素相関については、ステレオ収録した風雑音をコヒーレンス関数で計算した結果である。振幅・パワー相関については、収録風雑音の振幅・パワーのみを抽出してバイアス値を引き、それをコヒーレンス関数で計算した。各種相関値はコヒーレンス関数の絶対値である。
ピークは31Hzと2000Hz周辺で0.8程度であるが、2000Hz周辺については扇風機の動作音によるものである。これより、複数マイクロホンを使用した風雑音低減の低周波帯における有効性が確認された。また、125~1000Hzの周波数帯については複素相関が低いことから、この周波数帯では2信号間で位相についての相関が無いことがわかる。


図2. 向き別比較
図3はマイクロホンの向き別の複素相関値である。62Hz周辺では、真横では0.4、正面では0.1程度の相関がある。低周波では最大で0.4程度の相関値の差があり、風向きによる低周波の相関変化が大きいことがわかる。


図3. 窓関数別比較
図3は各窓関数を用いた場合の複素相関値である。1000~8000Hz周辺で、ハニング窓に比べブラックマン窓・矩形窓の相関値が下がっている。矩形窓はサイドローブの減衰が小さいため、その影響を受けていると考えられる。また、ブラックマン窓はメインローブの幅が広く、近接する周波数帯での相関値がその影響を受けていると考えられる。


図4. マイクロホン間隔別比較
図4はマイクロホンの間隔別の複素相関値である。低周波の相関値をみると、間隔1cm、3cm、10cmでそれぞれ0.75、0.65、0.2程度となっており、間隔10cmでの相関値の低下が目立つ。複数のマイクロホンを使用して風雑音の低減を行う場合、ある程度のマイクロホンの間隔の狭さが必要となる。

関連情報

担当者
中島 弘史(情報学部コンピュータ科学科 准教授)
三好 和憲(情報学部コンピュータ科学科 教授)
分野
電気・電子、情報・通信
関連論文
坂田 直人,橋野 樹広,中島 弘史,三好 和憲,”マイクロホンアレイによる 風雑音低減の検討” (信学技報, vol. 113, no. 413, EA2013-107, pp. 21-26, 2014年1月)